広報誌「花ごころ」に連載中、園芸研究家の山さんの"花コラム"を掲載しています。
後から日本に入った仲間はすべてベゴニアと呼ばれていますが、本種は古く江戸時代末期に中国から入ったことや、耐寒性で戸外で越冬することなどから、ベゴニアの仲間には入らず漢名の秋海棠の音読みがそのまま和名になっています。
半日陰を好み、草丈50〜60cmで8〜10月に開花、花の終わるころから節々に直径3〜5mmの球根(木子)を成らせ、間もなく株もとに落ちて、親株の球根と共に冬を越します。翌年はそのまま芽を出しますから、数年放置した株は大小ひしめき合った集団になります。
多くの植物は、子孫を親株からすこしでも離そうとするのですが、その努力は無さそうです。故郷の中国南部からインドシナ半島ではどんな条件なのでしょうか。栃木市の出流山の野生は傾斜地の川べりで降雨による広がりのようです。粉末のような種子は胚乳がないため発芽、育ちの条件が厳しく、日本では種子による自然繁殖は見当たりません。
ベゴニアは熱帯、亜熱帯に2,000種ほどあるといわれ、木立(こだち)、球根、根茎ベゴニアに分けられ、その改良は見事なものですが、耐寒性はシュウカイドウだけです。
耐寒性を求めてシュウカイドウに交雑が試みられていますが、雌花は貞操信念が強く、他種の花粉は全く受け付けないらしく、花粉は、ごく一部に浮気をするようですが、肝心の耐寒性は遺伝しないそうです。